7.トーイング
さて、実際の引き方です。

種目・プレーヤーの技量・水面状態などにより引き方は変わるのですが、全部説明するわけにも行きません。

そこで、ここでは

1)種目はWB(ウェイクボード)

2)ドライバーは初心者(引き物経験なし)

3)プレーヤーはまったくの初心者の男性

4)水面はさざなみ程度で風はなく、WS(水上スキー)をしている艇が1艇見 える。

という状況を想定して説明します。

まずはスタートから入りますが、ドライバーとプレーヤーが共に初心者、という状況ですと、はっきり言ってプレーヤーは拷問状態になるでしょう (^^;。

でも、これから書く事を覚えて実行してもらえば、拷問ではなくお仕置きくらいには改善されると思います(笑)。

双方がスタートのコツさえつかめば、後は天国になります。頑張ってください。

●スタート〜滑走

最初に覚えていて欲しいのは、プレーヤーに負担を与えない、という事です。

スタート時、プレーヤーはボートの力と水の抵抗を全身で受け止める事になります。これは想像以上に大きなものです。

プレーヤーが上手ければ、殆ど抵抗は受けないように出来るのですが、初心者には無理です。

ドライバーの操作で楽をさせてあげてください。

ではスタート時のチェックポイントを項目で上げていきます。

・プレーヤーがスタートの合図を出す

ドライバーはロープにたるみが無い状態でプレーヤーの準備を待っていてください。

プレーヤーはバーをしっかり握り「いつでも引いていいよ」という体勢と心構えが出来たら「お願いします!」とドライバーまで聞こえる大声で叫んでください。

1)プレーヤーの体勢が整ってからスタートする

「お願いします」の声がかかったらドライバーは、

・ロープはしっかり張れているか

・プレーヤーの姿勢は安定しているか

・プレーヤーの履いている板の先が水上に出ているか

・周りに他船などの障害物はないか

・大きな波が来ていないか

などを瞬時に確認して、すべてOKなら即スロットルを入れてください。

1つでも欠けているものがあったら、スタートしないでください。

ロープのたるみを無くすなど、すぐ解消できる場合にはOKになった時点でスタートしてください。

なかなか条件が整わない場合には、プレーヤーに「波が来てるからちょっと待って」などと理由を伝えて上げましょう。

そして条件がクリアされたら「OK」サインを出し、プレーヤーが再度「お願いします」の声をかけてくるのを待ってください。

ドライバーズシート 2)スロットルは「じわっ」から「ぐー」

スタート時のスロットルワークは重要です。これ一つで初心者をあっさり立たせる事も可能です。

反対に上手い人を転ばせる(スタチンともいう)事も出来ます(笑)。

エンジンの馬力によってスロットルの開け方は違ってきますが、大事なのは

・プレーヤーが支えきれないようなパワーを出さない

・なるべく早くプレーヤーが浮き上がってくるスピードにする

の2点です。

ボート・ジェットに関わらず、スロットルを「ポン」と入れてしまうと、プレーヤーはバーを支えきれずに手放してしまいます。

何回やってもこうなってしまう場合は、ドライバーのスロットルワークが悪いせいです。プレーヤーの握力が無いのではありません(握力の少ない子供でも滑る事は出来ますよね)。

最初の1〜2秒は「じわっ」とスロットルを開け、その後は「ぐー」とスムーズによどみなく「ちょっと早いかな?」位の感じでスロットルを開いていきます。

この間、バックミラー等でプレーヤーの状況を見続けていてください。

ジェットの場合には指先で微妙にコントロールという事になります。 難しいですが、スムーズな加速が出来るように練習してください。

3)体が上がってきたらなるべく早く安定スピードに

速度が上がってくると、プレーヤーがちゃんとした体勢でいれば自然に板に浮力がでて、体が上がってきます。

もし、プレーヤーが前のめりになりそうなら、すかさずスロットルをわずかに戻します。

反対に、後ろに倒れ込んでいる場合、大抵はプレーヤーの姿勢が悪いのが原因です。スピードを上げても立たせるのは難しいですね。

いさぎよく転んでもらって(笑)姿勢が悪い事を伝える方が早いでしょう。

速度が上がってくると、浮力が増し、安定性が出てきます。

なるべく早くその領域にまで速度を上げてください。WBですと20km/h位で安定してくるはずです。

4)艇は真っ直ぐ走らせる

スタート時、艇は真っ直ぐ走らせてください。曲がって走ると、安定して滑る事は出来ません(特に初心者は)。

プレーヤーを気遣いつつ船を真っ直ぐ走らせ微妙なスロットルワークを行うという、ドライバーには過酷な状況ですが、ここが頑張りどころです(慣れればど〜っていうこともなくなります(^^))。

「真っ直ぐかどうかわからない!」という場合には、振り返るかバックミラーを見るかして、自分の航跡を確かめましょう!。一目瞭然ですよ。

5)プレーヤーが横方向に出たら同じ方向へ舵を切る

WBのスタート時に、プレーヤーが予期せぬ方向に進んでいく事があります。

これはWBが横乗りである為、体が開いてしまい、横へ横へと出てしまうのです。

こうなってしまった場合、ドライバーはプレーヤーが向かった方向へ舵を切り引っ張ってあげてください。そうしないとプレーヤーは板の真横方面から引かれているようになり、かなりの確率で顔面から転びます(痛そ〜!)。

●滑走中

うまくプレーヤーを立たせて安定して滑り始めたら一安心です。

後は次の事に注意しながらトーイングを行ってください。

・速度を一定にする

前にも書きましたが、プレーヤーの滑走中、ドライバーは速度を一定に保つ事が重要な仕事になります。

速度に揺らぎがあると、プレーヤーは大変滑りにくく、場合によっては思わぬ転倒を招いたりします。

速度を一定にする為に細かいスロットルワークを行う必要があります。

ちなみに、私はスキーボートの場合ですと、小指を船体のアームレストに乗せて残りの指でスロットルレバーを握り、そのうちの親指と人差し指の2本で細かいスピードコントロールを行っています。

ジェットの場合、乗っているのがSEA-DOOなので親指コントロールになるのですが、スロットルレバーの先端が親指の付け根に当るくらいで握り、レバーを付け根で押すような感じでスピードを合せています(手が疲れるんだな、これが!! (^^;)。

船によりレバーの位置も形状も違うので、実際にトーイングする前にどういうやり方が適しているか研究して見てください。

・可能な限り直線に走る

これも前に書いた通りです。

真っ直ぐ走る事がトーイングですので、前方に目標を置いて、そこに向かって走らせつつ、自艇の航跡を確認して修正を加えて下さい。

ここで問題なのは、プレーヤーが横方向へ出た時に、艇が引っ張られて曲がってしまう事です。

スキーボートはハルのセンターにフィンが付いているので、引っ張られても影響が少なくて済みます。ちょっとしたハンドル操作で立て直せると思います。

スターンにロープを繋いでいるボートの場合には、「引っ張られているな」という感じがした瞬間に、プレーヤーのいる方向へわずかに当て舵をしてもらえれば修正可能だと思います。

問題はジェットの場合。

ハンドルを切っただけではダメです。スロットルも開けないと持っていかれます。しかもかなり開けないと・・・。

船体の大きさとエンジンの馬力により、修正の度合いが異なりますので、実際に試してもらうのが一番だと思います。

なんだか難しそうに書きましたが、慣れると反射的に出来るようになりますので安心してくださいね (^^)。

・トーイングラインはできるだけ一本に

言葉として的確ではないかもしれませんが、言いたいのはこういう事です。

トーイングを繰り返し同じ水域で行う時に、

「真っ直ぐ引っ張り180°変針、今走ってきた航跡と重なるように真っ直ぐ引っ張り180°変針」

とトーイングして欲しいのです。

こうですね

・アクションは合図とともに

方向転換などを行う際には、必ず事前にサインを出してプレーヤーに伝えてください。それも直前ではなく、余裕を持って出すようにしましょう。

・常にワッチ(見張り)を怠らない

ドライバーはトーイング中は全方向のワッチをしながらドライブします。

おまけに直進維持と速度維持も行っていますから大変な緊張を強いられます。でも「船長」である以上、それらの仕事を確実にこなしてください。

同乗者にはドライバー補助として、他艇やプレーヤーを含めた後方部のワッチを行わせてください。

どんなに些細な事でもドライバーに伝えるようにさせておきましょう。

・危険回避は早めに行う

他艇が近づいてきたり、前方に網が入っていたりしたら早めに危険回避をしてください。

トーイング中は自分が考えている以上に艇の動きが制限されています。通常時の機敏な動きは望めません。たとえ艇が回避できてもプレーヤーは自分で動く事は出来ませんので回避できない事も考えられます。

危険回避は「早すぎる」という事はありません。

●旋回

どこまでも真っ直ぐ走るのは気持ちが良いですが、そうは問屋が卸しません。

いつかは方向を変えなければならない時が来ます。そんな時は旋回しなければなりません。

前に述べたとおり、トーイングは平行方向に繰り返すので、通常は180°変針を行う事になります。方法は次の通りです。

左に旋回しようとする場合を例に取ると・・・、

1)真っ直ぐ走ってきて

2)一旦右へ

3)左へ旋回開始

4)自艇の走ってきた航跡に向かい

5)自艇の引き波越えて

6)航跡の中に入り、旋回完了

こうすると、自分の引き波の影響を最小限にとどめられ、尚且つ滑走中の水面に余計な波を起こす事が防げます。

●行き交い

想定として「WS(水上スキー)をしている艇が1艇見える」としておきました。そういう時の行き交い方法を説明します。

まずトーイング方向ですが、可能な限り他艇と平行に行うようにしてください。

これがお互いにとって一番引き波の影響が少ない状態です。

トーイング中にトーイング中の艇に遭遇した場合、安全な距離を保ちながらプレーを続行してください。止めたりする必要はありません。

正面からWBやWSをしている艇が来た場合、お互いなるべく離れてるのが理想ですが、もし近づいて通過する場合には、平行して逆走して通過したらお互いの引き波の中に入って下さい。

次はトーイングしていない時にトーイング中の艇に遭遇した場合です。

自艇が行こうとしている方向に向かって、他艇がWSスラロームやジャンプを行っている場合には、他艇のトーイングラインの傍で一旦停止して、目の前をそれらが通過したらスキーヤーの後を走るようにしてください。あまり離れずくっつかず、転んだら絶対避けられるという微妙な距離でね。

ついていく時には、何があってもスキーヤーから目を離さないように!。

逆方向に行くのだったら、同じように停止していて、通過後に他艇の航跡に乗っかって走るようにしてください。

WBやWSトリックを行っている時は、トーイング中と同じようにして行き交いしてください。

●転倒・プレー中断

大抵の場合、プレーヤーが転んでプレーが中断します。

派手な転倒をしたりした場合、ドライバー若しくは同乗者は「大丈夫?」とプレーヤーに声をかけてください。プレーヤーは、大丈夫なら両手で○を作って自分の状況を知らせてください。

もし合図が無い場合、ドライバーは「緊急事態」と判断して即座に救助に向かいます。

●再スタート

プレーヤーが大丈夫だったら、プレーを続行する為に再スタート準備に入りましょう。

まず艇をデッドスロー〜スローで浮いているプレーヤーに近づけていきます。

艇を近づける際には風上、風下を考えましょう。

風上側から近づく場合には、充分距離を置かないとプレーヤーに接触する可能性があります。

風が無い場合でも、プレーヤーとの最接近距離はボートで2m位、ジェットですと1m位までにしておきましょう。

プレーヤーに接近したら、スロットルはニュートラルとデッドスローの繰り返しになります。ゆっくりゆっくり慎重に艇を動かしてください。

バックの付いていないジェットの場合ですと、スロットルオフとエンジンストップとエンジンスタートの繰り返しになります。大変ですが安全確保の為ですのでそのようにしてください。

プレーヤーにロープ&バーを渡す方法ですが、ロープを渡した後、今までと同じ方向に進むのなら方法1、逆方向に行くのなら方法2で行います。

・方法1

単純に180°回るのではなく、270°回って90°戻すようにすると、プレーヤーが取りに行かなくても、自然にロープが寄っていきます。

くれぐれも船体後部をプレーヤーに衝突させないよう、安全距離を保ちながら旋回してください。

・方法2

_

こちらも90°回って90°戻すようにすると、ロープが上手くプレーヤーに渡ります。

1.2.どちらの方法においても、右に回るか左にするかは、ドライバーの居る側を内側にするように決定してください。ドライバーがプレーヤーを目視し続けられるようにする為です。

プレーヤーはロープを手にしたら「ロープOK!」と叫んでください。ドライバーから見えない場合もありますから。

そして両手とも親指と人差し指で輪を作り、その中にロープを通すようにして、両手を目の前くらいまで上げておいてください。そうするとドライバーがロープの位置を確認できて安全です。

どんな場合でもプレーヤーはロープを手繰り寄せては行けません!。

ロープが指や手や体に巻き付く恐れがあります。

ドライバーはプレー前に必ず注意しておいてください。

ドライバーはプレーヤーの手の中にあるロープの動く速さを見ながら、何かあったらスロットルをリバースにして艇を止める事が出来るようにしていましょう。

バーがプレーヤーに寄ってきたら殆ど止まるくらいの速さで進み、バーを持つ直前にリバースに入れ行き足を止めます。

リバースの付いていないジェットですと、それより前にエンジンストップして、バーが渡る所で行き足が止まるようにするとベストです。

プレーヤーはバーをつかんだら「バーOK!」と声をかけてください。

バーがプレーヤーに渡ったら、後は前回・前々回に説明したエントリー・スタートと同じ手順です。


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LAST UPDATE 1998-03-26